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まず、赤い石灰藻の機能については、昔に思われていた程に重要では無いとする見方が多くなりました。がしかし、水槽内のミネラル物質(カルシウム等)を消費する生体である一方で、水槽内生物(サンゴ等)に対する様々な作用が考えられています。
近年、研究されている珊瑚産卵の誘発物質を放出している可能性など、未知の領域で水槽内に活力を与えるものであるのかもしれません。
また、ライブロックの赤みなどは、水槽内を判断する視覚的意味も持ち合わせているのでしょう。
確かに、サンゴ礁が健全に発達する綺麗な海域でこそ、綺麗な赤みを帯びたライブロックが見られます。
次に複雑な形状で軽いという点についてですが、これは水槽内での酸化・還元層の領域やバランスの問題で言われているものだと考えられます。
複雑で軽いライブロックは、好気細菌が定着する表面がそれだけ多くなりますし、軽くて多孔質なライブロックは、内部の還元的環境を維持しやすい側面があるのかもしれません。
一般的に言われるライブロック組みで重要な隙間や水流の問題などは、嫌気的になり易いライブロック全体の表面を好気的な環境に保ち、内部域の還元層を維持する目的があるのではないでしょうか。
密度の高い石灰岩を水槽内の底砂にしばらく埋めれば、内部は真っ黒な硫化水素で覆われてしまいます。(これは、内湾の砂地などに埋まった岩などでも見られます。)
水槽内で機能する酸化と還元のバランスがライブロックに求めらる理想的な機能なのだと考えています。
最後に、豊富な付着生物についてですが、これは地球環境でも言われている事と同じく、生物層(生態系)の底辺を豊富で広くする事により、環境バランス変化への適応力を保つという意味だと解釈しています。
極めて閉鎖的な環境である水槽内では、その許容量の少なさから環境適応種の独占的な占有に偏りやすくなります。
海藻類を飼育した方なら一度は経験した事があるかと思いますが、ある特定の海藻だけが加速度的に繁殖し、一気に壊滅していくといった現象です。
海藻には季節的繁殖周期がありますので、適当ではない例かもしれませんが、広い環境である実際の海域でも、サンゴ種などで種の壮絶な占有争いが起こっています。
こうした、水槽内で起こり易い偏りを補正し、バランスを保つという意味で豊富な付着生物はライブロックの重要なポイントでもあるのでしょう。
厳密に言えば、どうのような海域で生息する生体層を水槽内に持ち込むのか、という事が更に重要であり、これは、皆様がどうのような海域を水槽内に作るのか、という事と関わる事だと考えています。
光量・水温・栄養分や塩分濃度など、環境に合わせた生体バランスを導入しなければ、適応種の占有が見えない部分で起こる可能性を否定出来ないと考えています。


もし、あなたが150cmオーバーの水槽をお持ちであれば、かなりの部分は自然にある造形を天然のライブロックで表現する事が出来るでしょう。
がしかし、60cmもしくは、それ以下の水槽内でダイナミックなサンゴ礁を表現するとなれば、自然には無い(または希少な)細かな造形を持ったライブロックが必要になるのではないかと思います。
一つ一つの凹凸や、隙間や空間、そして光の影で出来る陰影までもが、自然を何十分の一にまでスケールダウンしたものが必要となるからです。
これこそ、皆様の水槽サイズや表現したい水槽による重要な選択だと考えています。
更に、メイン生体の土台としてライブロックが作る、沈んだ色合いとその中での微妙な立体感を演出する地味な部分にまでライブロックの果たす役割があると考えています。
一般的にコーラル類の飼育で使う青みの強いライトでは、赤い石灰藻は黒に近づいていきます。
隠れた背景となるライブロックは、鮮やかな生体をいっそう映えさせ、水槽内をより魅力的にしてくれますし、その影の部分での細かな立体感が水槽をリアルかつ奥深いものにしてくれると思います。 3ヶ月、半年、1年後に、違和感なくじっくりと眺められる水槽に仕上がる事がライブロックに必要とされるレイアウト的機能だと考えています。


潮通しの良い場所で入り組んだように出来るリーフエッジのサンゴ礁。
幾重にも重なりながら様々な種類のサンゴが存在する理想的環境です。
こうした場所で見られるのが、全面は石灰藻で覆われた岩状のライブロックです。
一般的に浅い場所ほど表面の付着生物が多く、深くになるにしたがって少なくなる傾向があります。

浅場域のライブロック


中層部のライブロック


深場域のライブロック


    ■ リーフ内側のライブロック
リーフエッジからリーフ内の深みに入る手前、ミドリイシが群生する場所です。
枝状ミドリイシの死骸が積み重なった脆い岩礁帯の上に更なるミドリイシが枝を伸ばします。
こうした場所のサンゴの隙間で見られるのが枝状のライブロックです。
  
  

枝状のライブロック


    ■ リーフ内部のライブロック
リーフの内部はミドリイシの死骸(バラス)や砂などが溜まり、季節や海況によって濁りなどが出来る場所でもあります。
こうした場所ではリーフエッジで見られる赤い石灰藻より茶色の藻類が岩表面に点々と付き、裏面に石灰藻が見られるという特徴があります。
  
  

ライブロックの表面


ライブロックの裏面




初期開発されたセラミックス。(鉄分を含む茶系の試作品)
全体的に硬質感があり表面上の凹凸をもう少し立体的な感じに仕上げる課題をもった試作品。
ライブロックに見られる細かな穴や割れなども課題とされたものです。
  
  
  
  
上記の課題を解決する為に表面への凹凸処理が施された試作品です。
目的どうり立体的で自然な表面形状に仕上がりましたが、底面がフラットである事や内部密度が濃く重量感がある事などが次の課題として残りました。
がしかし、この表面処理により出来上がった細かな造形は、硬過ぎず柔らか過ぎずといったリーフの持つ特徴を表現するものとして開発の大きな前進となりました。
  
  

上記画像は、こぶし大サイズの天然岩(左)とセラミックス(右)との比較です。
ライブロックとしての必要強度ギリギリの試作品です。(黒っぽい色合いは造形をはっきりと見る為に自然風化させたものです。)
底面形状がフラットである事も解決され、いよいよ初期段階での完成品として出来上がりました。
天然造形を縮小しアクアリウム用に開発したセラミックスです。

    ■ セラミックスの熟成
リーフの岩肌をイメージしたセラミックスにリーフエッジで見ることのできる綺麗な石灰藻を付着させる事を熟成テーマにしています。
付着物に関しても、腐敗が進みやすい浅場の生体を避け、より深層部の熟成を目標にしています。
  
  
  
  
内部はセラミックス特有の多孔質構造になっており、熟成後も内部腐敗等が発生しにくい特徴があります。(天然等の破砕によるライブロック採取では、内部嫌気細菌の露出と死滅で一時的に水質を悪化させます。)
ライブロックのろ過機能でもある硝化・還元機能を発揮する為のセラミックス特性を生かした熟成を目指しております。

  
水槽内で見たセラミックスライブロックです。
ブルーライトの中での質感や陰影もライブロックにとって重要な要素です。
例え小さな1つのライブロックであっても、リーフを表現する事が出来るものとして開発を進めております。